【おしらせ】2011年12月19日、ネット界の超有名ジャーナリスト“ツダ様”が、「大庄の店員はドM」ということで、
      2010年10月13日の記事「体質なんだもの」をTwitterでたまたま話題にしてくださいました。勝手に御礼申し上げます。

2011年5月20日

ハレ、ケ、ケガレ。

「ハレ」 
・儀礼や祭、年中行事などの「非日常」 

「ケ」 
・ふだんの生活である「日常」 

「ケガレ」 
・ケの生活が順調にいかなくなること。 



柳田國男による、時間論をともなう 
伝統的な世界観のひとつ。 

これはそんな、 
非日常のお話です。 



臆することなく。 

いつもみたいに、 
頭カラッポで読んでください。 

ただ、お食事時には読まない方がいいかと。 

(※ そういうの好きなひとは急いで白米を用意してください。) 



********** 



ケ。 
就職活動生の日常。 

リクルートスーツに身を包み、 
颯爽と駅を街をかけてゆく。 

新宿の雑踏を行く僕は、 
まもなく、自分に非日常が襲いかかるとは、 
知る由もない。 



何か直感なのかもしれない。 

気配かもしれない。 

視線かもしれない。 



14番ホームの階段を駆け上がりつつ、 
ふと、 
自分の肩に目をやった。 

あ。 

・・・白? 

・・・鳥のフン? 




鳥のフンと判断するまで、 
そう時間はかからなかった。 

汗ばむ陽気だ。 

電車に乗り込む前に 
何食わぬ顔でジャケットを脱ぎ、 
フンの面を隠すように飛び乗った。 




正直、なにがあったか覚えていない。 

本当にフンに襲撃されたのか、 
いつなのか、 
どこでなのか。 




非日常なのか。 
これが。 

ハレなのだ。 
祭りなのだ。 

そう、めでたいのだ。 

くそまみれの糞祭りだと思うと、 
この男、平常心など保つことは無理だった。 

すぐさま、 
「【超速報】うんこぶっかけられる。」 
とツイートした。 

5月12日16時36分のこと。 
全世界に糞祭りの開催が告げられた。 

ネットは震撼した。 

こいつ、馬鹿かと。 




まだ、被害の全体像を見たわけではない。 
だが、ちょこんというレベルではない。 

一瞬確認しただけだが、 
肩から背中の広範囲に被害のもよう。 

ただちに影響が出るレベル。 
これにはエダノ氏も黙ってはいられない。 



俺は一面のフンを隠し持っている。 
山手線の車内は人がいっぱい、 

この状況に一人、 
非日常が起こっている。 

なんなのだ、これは。 

これこそが、非日常なのだ。 
ハレなのだ。 



しかし、 
現実を見なければならない。 
現実と向き合わなければならない。 

フンの被害状況という、 
現実と。 


帰宅した私は、 
ケからハレになった瞬間から隠していた、 
ジャケットの後ろのフンと、 
冷静に向き合う事にした。 


ハレは終わるかもしれない。 

こんな非日常、うそかもしれない。 

祭りは幻かもしれない。 

めでたいと言い聞かせただけかもしれない。 







現実を見た。 

大胆かつ、豪快な犯行だった。 
ケなんて世界は、そこにはなかった。 

ケガレだ。 



予想は軽く超えた。 
くそまみれの糞祭りは加速する。 

雨が降り始めた東京とは裏腹に、 
ハレの現実は、浮き彫りになった。 

せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン、せなかいちめんのフン。 

僕のケは、日常は、困惑した。 

紛れもない汚れだ。 
ケガレだった。 



スクリーニングでなく、 
クリーニングがただちに必要。 

非日常をバッグに詰め、 
雨降る中、クリーニング屋へと向かう。 



「あのーすいません…」 

「鳥のフンの被害にあってしまいまして…」 


惨めだ。 

クリーニング屋のおばさまの前に、 
「僕はうんこぶっかけられました」と、 
告白している青年がいる。 

こんな告白、 
だれが喜んでしようか、 
だれが喜んで聞こうか。 

レベルの高い羞恥プレイ。 
惨め過ぎる。 



だが、これもハレなのだ。 
非日常なのだから、恥じる必要はない。 

堂々と生きよう。 

僕はうんこぶっかけられたと。 
恥じることなく生きよう。 



そこですかさず、 
クリーニング屋のおばさまが言った。 

「汚物処理で別途1,050円かかります。」 




なんだろう。 

この感じ。 

「 汚 物 処 理 」 

という4文字が、 
僕の羞恥心をなおも刺激する。 



僕のせいではないのに、 
それも僕の汚物ではないのに。 

クリーニング屋のおばさまに、 
「 汚 物 処 理 」と言われ、 
代金を請求されている青年。 


感情は無かった。 
感情はケの世界に置いてきた。 



なに言われても、 

どんな現実だろうと、 

イマ、ココ、は、 

非日常なのだから。 






「おねがいします。」 

「あわせて2,089円になります。」 

代金と引き換えに、 
僕はケの世界に帰ってきた。 

くそまみれの糞祭りという、 
非日常の世界から。 





ハレの入り口も、 

ケへの帰り道も、 

案外近くに、転がっているかも。 
そして突然、あなたに降りかかるかも。 




という。 
ノンフィクションなファンタジーのお話。 

柳田國男にごめんなさいしないと。